不育症・着床不全・生殖遺伝外来(火曜・隔週金曜 30分/1人)
不妊症、不育症の診療は日進月歩ですが、最近特に注目されているのは、不育症(妊娠はするものの分娩に至らない場合)と着床障害(良好受精卵を移植しても妊娠しない場合)に共通する異常です。流産の原因には幾つかありますが、最も頻度が多いのは、受精卵の染色体異常です。この場合の対応は着床前スクリーニングですが、残念ながら日本ではまだ認められていません。ただ、染色体正常の受精卵を移植しても妊娠継続は60〜70%です。残りは、免疫異常、子宮内膜の問題、子宮機能の問題、ホルモン環境などが原因と考えられています。これらは、不育症と着床障害の両方に関わるものです。
不育症の専門外来は極めて少ない北海道において、当外来では系統的不育症検査に加え、注目を浴びている最新の検査・治療法(北海道内で以下の@〜D5つ全ての検査が行えるのは当院だけです)が可能です。
当科は、北海道の研究グループ「さっぽろ不育症・着床障害コンソーシアム」に参加し、他の専門施設と協力して、診療のレベルアップに努めています。
- NK活性測定およびイントラリポス治療(点滴注射:脂肪製剤)
不育症の原因の一として、NK活性の異常活性化により流産することがわかってきました。NK活性高値症例に対して従来は高価な治療が行われてきましたが、当院では、より容易で負担の少ないイントラリポスの点滴によるNK活性の正常化を目指すことが可能です。
- シネMRI
子宮内膜は月経周期に合わせて動態が変化しており、うまく着床しない例では、周期的な子宮内膜の動きが異常な動態を示す可能性があります。当院ではシネMRIにより、子宮内膜の経時的変化を動画撮影して解析することが可能です。
- 次世代シーケンサーによる子宮内細菌叢異常の検査:子宮内フローラ
子宮内のフローラ(細菌叢)のバランスを網羅的に遺伝子レベルで解析し、結果をもとに着床しやすい子宮内膜環境を作り上げることが期待できます。
- 着床ウィンドウに対するERA(endometrial receptivity analysis)
胚の子宮内膜への着床能を評価する診断技術です。患者様一人ひとりに合った着床ウィンドウ(WOI)の時期を特定し、適した胚移植が行えます。
- CD138免疫染色検査
慢性子宮内膜炎(CE)は、持続する子宮内の炎症であり、形質細胞(CD138陽性)の存在が特徴的です。CEは着床障害のみならず反復流産(不育症)にも関与する可能性を示唆しています。
※上記@~Dの生殖補助医療領域の新しい診断法、技術法は、倫理委員会を設置し、審議・認可されております。
- カウンセリング(毎週火曜日):TLC(tender loving care)
通常の外来では時間をかけゆっくりと相談できないため、30分以上の時間をかけ治療方針や遺伝相談についてのご相談を臨床遺伝専門医が受けています。また、治療についての不安などについても専門の心理士が対応しています。
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